冬服企画

 しんしんと、雪が降り積もる。

「もうそんな時期かよ」
 空を見上げたアルトは、舞い落ちてくる白い雪にすぅっと目を細めた。
 昨日はまだ降っていなかったというのに、地面には早くもしっかりと雪が積もっている。恐らく、昨夜からずっと降り続いているのだろう。
 突如吹いてきた冷たい風に、雪が酒場に舞い込む。扉を開け放したままつい雪を見詰めてしまっていた彼は、慌てて扉を閉める。
 この雪の中、できれば外出はしたくないものだと思いつつもアルトはマフラーを巻きなおす。そして一歩、雪の中に踏み出した。

 街の中を暫く歩いていれば雪は段々酷くなる一方で、やっぱり出てくるんじゃなかったとぼそぼそと呟きながら彼は反省する。
 周囲を歩いている人はほとんどいない――それもそうだろう。ひとたび風が吹けば舞い落ちてくる雪に、舞い上がる雪に、視界が白く染まってしまうのだから。
「で、あいつらは一体どこにいるんだって……? 本当に帰るぞ、おい」
 ぶつぶつと呟く声は雪に吸収されて響かない。
「ん……あれか?」
 広場に、人が立っているのが見える。しかも、面倒くさそうに。その様子を見て、アルトは首を傾げた。
「おっかしいなぁ、二人のはずなんだけど……」
 そう。ここには彼を呼び出した二人がいるはずだった。
 一人は遠目に見えている、適当にジャケットを羽織っているらしい彼、ヤマト。そしてもう一人はギルドの赤い魔女、リア。
 彼女がいるのだからこの雪の中でも探すのは簡単かと思いきや、一体どこにいるのだか。そもそもこの雪の中であの格好のまま外出しているとも思えない。
 一陣の風が吹き抜け――少しだけ、風も雪も収まった。
 もう一度ヤマトの方をアルトが見遣れば、彼の傍らには金髪の少女が、いた。
「はぁ!? おい、リア、お前一体どっから出てきたんだよっ」
 雪に足をとられながらも思わず叫べば、二人がそれぞれにやりと、にこりと振り返る。
「どこからもなにも、私は最初からここにいましたけど? アルトさん、視力は大丈夫ですか」
「そーだよ、お前来るの遅いなって、二人でこの寒いなかわざわざ待ってたんだぜ?」
「ここに呼び出したのはお前らだろうがっ。……で、リア、お前本当にここにずっといたのか?」
「いましたよ」
 あっさりと告げる彼女の姿を、アルトは上から下に眺める。
 彼女の白いコートはあの視界の悪さでは見えなかったかも知れない。だが彼女の金髪まで雪に紛れてしまうとは思えない。
「お前、ちょっとあっち向いてみろ」
「何を突然」
「いいから!」
 アルトの意図を汲んでか汲まずにか、彼女はくるりと回ってみせる。その背には、同じく白いフード。
「だからか!」
「何がだよ」
「あぁ、フードまで被っていたから見えなかったということですか」
 言いながら彼女はフードを被る。そんな彼女の後姿は、真っ白。
「よし、謎は一つ解けた。それで、何の為に呼び出したんだ?」
「あぁ、これ」
 手を出せというヤマトに微かに危険を感じつつも、アルトは大人しく手を出す。彼に握らされたのは、熱々のサツマイモ。
「……は?」
「リアが焼き芋食ったことねぇっていうから」
「はあ? なんだよそれ」
 思いっきり呆れた表情になるアルトを気にもせず、リアは両手に持った焼き芋に、幸せそうにかじりついている。どうやら彼女は今、ものすごくご機嫌なようだ。
「いやだからってこんなとこまで来てやるようなものかよ」
「焚き火のニオイって結構とれないじゃん? っていうリアの配慮」
 焚き火、と言われてアルトが彼らの足元を見れば、確かに火が燃えている。不自然にもこの雪の中で。
「これって……」
「あいつの固定化。便利だよなー、ホント」
「あぁ、確かに便利だよな」
 一拍。

「お前ら色々と無駄すぎるだろーっ!!」



<言い訳>
ぐだぐだすぎる(笑)
えぇっと、冬服企画にお前もなんか出せ、という流れになったので、なんか書いてみましたけどこれ冬服ほとんど関係ない(笑)
そしてレイさんの案をどうせなら使ってやろうと思ったにも関わらず、リアは帽子!と言ってあったのを思いっきり無視してフードにしてしまった大馬鹿者ですすみませんorz
そしてついでにリアが焼き芋を持っているのだとかいうお話しだったので、↑焼き芋。
ここまでのことを話している間に冒頭部分を書いていたが為に、雪の中というなんなんだこれ(笑)
ツッコミ絶賛受け付け中☆
2010/12/4



夢裏徨「月影草
ものかきギルド企画