イチオシ! 2

「リアちゃん、固定化っ」
「はい、固定化します」
 階下に下りれば切羽詰った勢いで言われ、何をと確認する間もなくとりあえず指差された物を固定化する。なんだかそれは、妙な動きをする緑色の物体だった。
 動きが止まったそれにほっとした様子で、リアに固定化を頼んだ本人、ロベリアはへらりと笑う。
「やー、助かったよ。ありがとね」
「いえいえ、この程度大したことありませんよ」
 にこりと返して、彼女は自分が固定化したものに近づいてみる。
 床に置かれた植木鉢。「なんでやねん」とでも言うかのように大きく葉を広げたその植物には、見覚えがある。だがそれは、動くようなものだっただろうか?
「それで、どうしたんですか、一体。まさかどこからか仕入れてきた薬を与えてみたら動くようになったとか言わないでくださいよ?」
 リアがロベリアを見上げれば、彼女は驚いたように目を丸くした。
「ありゃ、なんでバレちゃったかなぁ。まさしくそのまさかなんだよ」
 確かに、机の上には何らかの薬が入っていたと思われる瓶が転がっている。ラベルには「パーティ薬 みんなで踊れば怖くない」とか書いてあるように見える。だからきっと、そういうものなのだろう。
「何か、面白いことに使えそうですね」
「あ、やっぱりリアちゃんもそう思う?」
 もちろんです、と同意を求められた彼女は笑う。植物が踊りだす薬。なんだか楽しいことになりそうではないか。
「ところでその薬、動物に使ったらどうなるんですか?」
「あは、普通には動かない所まで動くようになるかも?」
 たとえば、髪とか。
 ロベリアもリアも特になにも言わないが、二人とも申し合わせたかのように思い描いているのは青い髪の僧侶。チョイスの理由はもちろん、面白そうだから。
「ちょーっとお弁当に仕込んでみようか。そういえばアルト君は?」
「もうじき下りてくると思いますよ」
 まだ呆然としているだろう彼を思えば自然と笑みも零れてくるというもの。
「おー、なんだかリアちゃんってば、ご機嫌だねぇ。あ、ピクニックにはついてくるよね?」
「もちろんです。どちらまで行かれるつもりなんですか?」
「うんうん、森まで行ってくるつもりだよー」
 どうして突然ピクニックに行きたいなどと言い出したのか。
 どうしてこのまだ風の冷たいこの時期に森なのか。
 それは、今の会話で大体分かったような気がする。
「その薬の効果を調べたい。そういうことですね」
 そういうこと、と彼女は自分のポケットをぽんぽんと叩いてみせる。どうやら薬は大量にあるらしい。
 その量はもちろん、実験に使っても余りあるほど――



<言い訳>
身内贔屓No2、すみません! ロベリアさん+リアのペアも、大好きなんです、外せません!
(というかちゃっかりアルト君の不幸フラグが…すみません・苦笑)
そしてなんだか分からないノリですみません! ネタが思いつかなかったんだorz
ということで第三弾に続きます。



夢裏徨「月影草
ものかきギルド企画