否・かみさまガタリ


 どうかされました?
 え…‥カミ、ですか? 信じるか、信じないか?
 どうしてそんなことを突然? ……あぁ、あのお二人ですか。
 でもどうして私なんです? カミについて語ることなんてないですよ、私には。
 そもそも、いるかいないかも分からないようなモノが必要なんですか?
 ふふ、弱い人ですね。そんなモノ、私は認めません。

 何故? 決まってるじゃないですか。
 カミはヒトを助けない。
 その存在以前の問題として、何もしないのがカミの存在意義ですよ?
 それならば、いてもいなくても関係ない――そうは思いません?
 まぁ、存在まで否定する気はないですけどね。
 頼ればいいじゃないですか。頼れるのなら。

 へぇ、キールさんはそんなことを言われたんですか。
 過去も未来も否定して、今だけを願う――あの人らしいですね。
 え、ジャンさんも似たような願いを? ……まったく違うじゃないですか。
 「世界の存続」と「現状維持」。確かに見た目は似ていますけどね。

 それで、願い事があるのかって?
 何も変わらないと分かっているのに、願うんですか? いるという保証のないカミに?
 なんて無意味な。意味のないことはしない主義なんです。

 ここまで完全に否定して、頼りたいときは全くないのかって?
 えぇ、ないですよ。少なくとも、「カミ」に頼ろうと思ったことはありません。
 救いを求めたくなること? 救いを自ら求めてどうするんですか。

 ですけど、もし何かの際に頼りたくなるのがカミ、ということであれば……
 ……いえ、なんでもありません。
 適材適所、モノは使い様、と思っただけですよ。
 別に、頼れるのはカミだけじゃないでしょう?
 カミなどという存在よりももっと確実なもの、あなたは頼らないんですか?




 万能でなくても、全知全能でなくても、頼れるヒトがいる。
 無茶だと笑われようと、無謀だと怒られようと、受け入れ、支えてくれるヒトがいる。
 それはすごく幸せなこと。
 だから、カミだなんて不確定な存在がいなくたって――






夢裏徨「月影草
ものかきギルド企画