ユリ:「ヴィル。お客さんが見えていますよ」
ヴィル:「客? 誰に」
ユリ:「ヴィル、あなたにですよ。あまりお待たせしないでくださいね」
ヴィル:「俺に? なんかやな予感しかしねーけど、行ってくる」
ユリ:「はい、行ってらっしゃい」

ヴィル:「ども…って、お前かよっ!?」
紅:「第一声がそれかよっ!? 仕方がないだろう、送り込まれたんだから」
ヴィル:「…なんか、妙に身に覚えのあるやりとりだな……。あー、折角来たんだ、なんか飲んでくか?」
紅:「そういえばここ、喫茶店だったな。何がある?」
ヴィル:「喫茶店ってぇからにはコーヒー・紅茶・オレンジジュースとかか?(ごそごそ)」
紅:「そこでチョイスがオレンジか……」
ヴィル:「…」
紅:「お? どうかしたのか?」
ヴィル:「……や、飲み物が準備されてるのはいーんだけど」
紅:「表じゃないから(*注釈)セルフサービスか。で、選択肢は?」
ヴィル:「……泣くなよ?」
紅:「怒るな、じゃなくてか?」
ヴィル:「俺は泣きてぇ。(棚から出した瓶を一本、テーブルの上に置く)」
紅:「…は?」
ヴィル:「『は?』じゃねぇよ。お前だって見たことあるだろ、リ○ビタンD。つかお前の場合はいつも世話になってたりしてな」
紅:「なってないっ! 俺の友は胃薬……orz」
ヴィル:「それ、更に悲しくねぇか? ……お互い辛いな」
紅:「はっはっは、他所に来てまでこの扱いかよ…」
ヴィル:「ん、待て、ブランデーが隠されてるぞ」
紅:「かく…?」
ヴィル:「(テーブルの上にどんと瓶を置いて)付き合うだろ?」
紅:「あぁ、貰おう」



雪風:「…あ、なんだ。先客がいたのか」
アッシュ:「あぁ、邪魔してるぞ」
雪風:「いや、構わん。てか、俺のじゃねぇし。隣いいか?」
アッシュ:「あぁ」

(沈黙)

雪風:「なぁ、あそこのあれはなんだ」
アッシュ:「あれ? あぁ、重い空気でちびちびやってるあの二人のことか? 知らねぇな、俺が来た時には既にあぁだった」
雪風:「ブランデーか。高そうってか、あいつらあんな飲んで大丈夫か? 度数高いだろ、あれ」
アッシュ:「少なくとも、やけ酒するにはもったいねぇ酒だな」
雪風:「それには同意する。もっと香りと味を楽しめっての」
アッシュ:「まー、あいつらがそれでいいなら、いいんじゃねぇのか?」
雪風:「いや、ブランデーの方に申し訳ねぇ」
アッシュ:「ならあんた、あいつらからあれを取り上げて来たらどうだ?」
雪風:「代わりは何がいいと思う?」
アッシュ:「代わりがいるのか? 『酒はそのくらいにしとけ』の一言で十分だろ」
雪風:「そんなに呑んでんのか、あいつら」
アッシュ:「あぁ、呑んでるな」
雪風:「じゃあせめて葡萄ジュースでも置いてくるか。…そういやお前、見かけねぇ顔だが誰だ」
アッシュ:「それを今更面と向かって訊くのか?」
雪風:「ここにいると、誰が新人で誰が客か分かんねぇんだ、仕方ねぇだろ」
アッシュ:「そりゃ大変だな」
雪風:「全くだっての。まぁいい、俺はあのブランデーを攫ってくる」
アッシュ:「あぁ、行って来い」

アッシュ:「なんだ、あいつ。人の名前よりブランデーの方が大事なのか?」



雪風:「お前ら、ヤケになるのも大概にしとけ。で、これ(ブランデー)は没収な」
ヴィル:「ここに来て酒まで没収かよ!? さすがに酷くね!?」
雪風:「ヤケ酒ならビールでもいいだろ。リボDでも構わねぇけど」
紅:「だ、か、ら、どーしてどいつもこいつも選択肢がそれなんだよ!? おかしいだろ!?」
雪風:「なんだ、テーブルに置いてるのはお前らのチョイスじゃねぇのか」
ヴィル:「違う! 断じて違うっ! 何が悲しくってんなもん、好き好んで積極的に選ばなきゃなんねーんだよっ! 大体そっちは出張したら小動物眺めてるだけとか平和で良いな、おい」
雪風:「あ? んなに羨ましいんなら、お前も触らせて貰えばいいだろ。癒されるぞ」
紅:「俺も癒されたい…いや待てよ、俺この間あいつに胃薬渡されたような…」
ヴィル:「はっはっは、胃は癒されるかもな、それ。…そーいや俺、マッチ持たされたのってあいつの援護のときじゃ…」
紅:「あったな、マッチ(笑)」
ヴィル:「肘鉄くらって伸びた奴には言われたかねぇ」
紅:「ぐ…人が忘れたい過去を持ち出しやがって…」
ヴィル:「生憎お前に『も』一杯あってな。 orz」
雪風:「『も』って辺り、言ってて悲しくねぇか?」
紅・ヴィル:「苦労のない一般人は下がってろ」
雪風:「りょーかい。酒はそこそこにしとけよ」
ヴィル:「なんつかさ、誰も彼も俺たちに対して酷くねぇ?」
紅:「それには全く以て同意する。……あいつ、結局ブランデー持って行きやがった…!」



***

透峰零さん宅「白虹太陰」より紅さんとアッシュさんをお借りしての飲み会を行いました。ありがとうございました!




月影草