この話のキーワードは「死者を使役する少女」。
 当初の予定では、殺人人形として育てられた雅沙羅と桜の二人が、戦争終了後どのような生活を送っていくのかを送っていくのか、を綴るはずでした。
 元々現代を舞台にする予定もなかったため、幽霊を介した特殊能力が多く登場していました。導入編で使われているのはその名残です。書き直した際に削ろうかとも思ったのですが、何故か開き直って残されることになりました。



 *裏設定:幽霊を介した特殊能力

 それぞれの「場」には、「記憶」がある。
 例えば昔火事があったのならば、それはその「場」に「記憶」されており、幽霊はその「記憶」を呼び起こすことで現在のその「場」に火を起こすことができます。
 その際の規模や遡れる「記憶」量などは、その幽霊の力の強さに依存。
 この幽霊の力の強さは、どれだけの人に慕われ、どれだけの人から力を借りれるか、に比例します。
 雅沙羅や華鏡は人望があるので、かなり強い力を有します。雪風は、彼らの足元にも及びません。

 雅沙羅と桜に直で使役されている幽霊は、実は三人です。
 桜が雪風を、雅沙羅が華鏡をそれぞれ「使役」しているのは本編からも明らかかと思います。
 さて残りの一人が誰かというと、「自分の中の自分」「束縛からの解放」で黒幕として出てきた幽霊で、名前は思幽(しゆう)。彼は生前、雅沙羅と同じく天皇に仕えていました。



 導入編のようなオムニバス形式で進んでいくはずだったこの話。当然のごとく、終わり、という概念その物がありませんでした。
 なんとなく響きと漢字の見た目でつけた雅沙羅の姓「諒闇」の意味を知ってしまったことで、この物語は大きくその流れを変えることとなります。
 まぁ、元々雅沙羅と桜が対立していた、という設定は変わらないかったんですが。

 長々と書いていると、登場人物の性格など変わっていってしまうもの。
 この話で一番性格が変わったのは雅沙羅です。そして華鏡。
 二人とも、最初は二面性がなかったんですね。今でこそあんなことになっていますが、当時はそこまで抱えるものもありませんでした。

 さて、この辺りでメインメンバーの現行プロフィールを。



 *登場人物紹介:雅沙羅

 本名・神武雅沙羅
 偽名?・諒闇雅沙羅
 1853/10/22生まれ
 身長・168cm位
 一人称/二人称/三人称:私/あなた/〜様・〜殿・親しいと呼び捨て
 
 外見年齢は18歳くらいですが、精神的に大人びているため、もう少し上にも見えます。
 細身で、作中でも大和撫子と数回言われているとおり、綺麗な子です。
 服装は巫女服ということで、まあ特に説明することもないかと。巫女服の左胸には金で菊の紋章が刺繍されています。
 長い黒髪は、白い紐で後ろひとつに結っています。

 清舞家の末っ子で、神武神社を管理する巫女。二人の姉と、一人の兄がいました。
 元々霊の姿を見ることはできませんでしたが、彼らの「感情」や「思考」を感じとることができました。その所為か彼女は彼らに守護されており、常に暖かい空気に包まれていました。なので彼女は温度感覚が狂っています。というより、外気温度に左右されることがない、と表現した方が正しいですね。
 雅沙羅自身は普通の女の子ですが、中に「神武雅沙羅」、巫女である冷静沈着な人格を内包していました。
 十八歳の時に他界しましたが、桜のことに責任を感じ、死ねないと彼女が思ったが為に、その時近くにいた華鏡がその生を繋ぎました。
 完璧主義な性格と持ち前の勤勉さに加え、半永久とも思える程の時間を与えられたために身につけた知識量は膨大。

 実は彼女、左利きだったりします。直されたので普段は右を使いますが、本人はどちらでも。



 *登場人物紹介:華鏡

 本名・祐宮(さちのみや)
 1852/11/3生まれ
 身長・160cm位
 一人称/二人称/三人称:僕/君/呼び捨て

 小柄で線の細い少年。
 次代天皇と次代神武当主の顔合わせで雅沙羅と出会い、物怖じせずに接してきた雅沙羅に惹かれたのが最初。お忍びで雅沙羅の住む村まで来てしまったことが数度あります。
 当時忌み子とされていた双子の兄で、弟・徠宮(ゆきのみや)とは引き離されて育てられました。皇位継承権を持っていたのは彼でしたが、政治や権力に興味がなく、それらに興味を示した徠宮に渡してしまいます。
 戦争に突入してからは弟の影武者として戦場を走り回っていましたが、雅沙羅に再会して旧幕府軍側につきました。
 十六歳で他界し、以来その程度の年齢の姿のまま。

 イメージソング:misery by fripside
「失うことに怯えてるのは 誰より君の方だね
 大丈夫だよ いつでも僕は 誰より近くにいるから」



 *登場人物紹介:桜

 本名・森下結
 偽名・新玉桜
 1862/7/2生まれ
 身長・153cm位
 一人称/二人称/三人称:私/あなた/〜さん・親しいと呼び捨て

 おかっぱで、どちらかといえばぽっちゃり系。太っているわけではないのですが。
 目が大きくたれ目設定があったはず。
 普通のどこにでもいそうな子です。群集に混じったら恐らく探すのに苦労するかと。
 特に服装設定はありませんが、まぁとにかく普通の女の子っぽく。

 雅沙羅によく懐いていた、九つ下の女の子。
 刀鍛冶・森下家の長女で、彼女は知りませんが弟が一人います。
 六歳の時、「天皇」に楯突いた雅沙羅への人質として、都合の良い殺人人形として軍に徴兵され、新玉桜の名前を与えられました。
 「噂話と現実と」を経て自殺しようとしたところを、雪風に止められました。当時十八歳。この時、成長も老化も止まってしまいました。

 イメージソング:hurting heart by fripside
「笑い方さえ忘れてしまっていた 全て失すはずだった
 でも残されてた 一つの痛みだけが 生きている証になった」



 尚、雅沙羅は一度他界しているが為に「死」そのものである幽霊が見えましたが、桜は他界していないので、当然幽霊などというものは見えません。
 長時間、雪風や華鏡が桜と共にいたため、順応し、見えるようになっただけです。
 そう。メインメンバーの中では彼女だけが「生きて」いたんですね。



 *登場人物紹介:雪風

 身長・大柄(笑)
 一人称/二人称/三人称:俺/お前/呼び捨て

 三十代前半くらいで、山男といった風貌。北の出身で、商人の両親がいます。本人は特に定住する気も手に職をつける気もなく、放浪の旅を続けていました。山中で迷って神武の管轄地に出たことがあり、いえ、結構しょっちゅう神武の管轄地に出没するために、雅沙羅とは顔見知り。

 「終焉の舞台」でちらりと出たのに気付かれた方もいらっしゃるかと思いますが、彼も桜に殺害されています。戦争終了後も暴走し続けようとした神玉桜を止めようとした際彼女に敵と認識され……だったはず。
 神玉桜の行く末を気にかけた雪風は死後幽霊となって彼女を見守ることを決め、後に雅沙羅と再会します。

 上三人に比べ、雪風はこれしか設定がないんですよね。
 いや、彼としては、変に設定を付けられて雁字搦めにされるよりも、この程度の設定で自由にやっていた方が幸せな気もしますが。



 *登場人物紹介:千秋

 本名・柳原千秋
 1853/9/30生まれ・もしくは1979/9/30
 身長・165cm位
 一人称/二人称/三人称:あたし/あんた/呼び捨て

 非常に活発で、結構強気な女の子。宮大工・柳原家の娘で、過去彼女には弟がいました。現在は一人っ子です。少なくとも兄弟設定はありません。
 過去・現在共に雅沙羅の親友…後者は自称のみの可能性がありますが。



 最後に、彼らが住んでいた村の設定を。



 *裏設定:雅沙羅たちが住んでいた村

 位置は特に定めているわけではありませんが、近畿の辺りかと思っています。お忍びで華鏡が行けたのだから、京に近いのだろうな、という位の認識で。
 この村では貴重な薬草などが取れたために天領地とされ、その管理は神武家に任せられていました。
 宮大工の柳原家は、この村に存在する唯一の武家。
 両家は古きより、この地を守る二つの柱でした。



 そういえば、Eternal にはなかったことにされた設定があります。

 「同質である存在は、世界に二つと存在してはならない」。これが世界に於ける大原則であり、この世界に存在する以上誰も逆らうことはできません。
 神武雅沙羅と清舞雅沙羅、森下結と清舞結は「世界」が同じ存在であると認識しました。ので、大原則に従い、どちらかが消されることになります。
 神武雅沙羅は自らを違う存在「諒闇雅沙羅」としていた為、世界によってどちらかの雅沙羅が排除される力も大きくはありませんでした。
 ですが問題だったのが結。世界は弱い方を排除しようとしますので、力の矛先は当然、後から生まれる清舞結にと向かいました。なので清舞結は生まれつき身体が弱く、その理由は原因不明とされ、現代医学には治すことができません。

 あ、一応補足しておくと、本来ならば早々に世界から排除されるはずであった清舞結が生きてこられたのは、神武雅沙羅が陰ながらに支えてきたからです。
 「ともしび」にて清舞結が体調を崩したとあるのは、神武雅沙羅が死亡した際、一時的に彼女からの加護がなくなったから。その後、以前よりも体調が良いのは、神武雅沙羅本人が守護するようになったため。

 この辺りの設定が消された理由は、「神道には輪廻転生もないのに、同一の存在とは何なんだ」と思ったから。
 恐らく宗教関連の辺りは矛盾やら誤りやらあるかと思いますが、適当に流してやってください。



 少し追記しました。('12 3/10)



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