現在サイトに置いてある作品の中で一番古い作品です。
 その分思い入れもあり、時間もかかっています。二度も書き直してもらえた作品は、過去にも(恐らく)未来にも、これ一本だと思いますよ。
 まぁ、そのお陰で名前は読めない、天才設定乱用しすぎのいわゆる中二病……いや、オリジナルは小学校の時ですが。
 そのオリジナルの構想ではこの話、五部構成だったか七部構成だったかになるはずでした。何をそこまでストーリーに盛り込んでいたのか、さっぱり思い出せませんが。
 この話で一番性格が変わったのは綜ですね。かなり堅苦しい喋り+性格でしたが、気紛れに変更してみた結果、今の綜になりました。人気が出たので、この変更は正解でしたね(笑)
 さて、この話は組織について語らねば始まりません。ということでとりあえず語ってみましょう。



 *設定:組織『闇・羽』

 元々、異端とされるほどの天才を一手に集め、彼らを保護したのが、この組織の始まりです。本部は理扉にありました。
 時が流れ、規模が大きくなる内に当初の目的は忘れ去られ、研究であればなんでもやっていい、との間違った認識がこの組織内に広まることになります。
 その結果、この組織の中では非倫理的な研究が数多く進められており、それらはまとめて「最下層」と呼ばれています。
 本部となる建物は昔からカモフラージュの為に、地上階が図書館、地下階が研究室となっていて、住み込み研究員の部屋も地下に配置されています。
 また、組織の存在を漏らさないためにも、一度在籍した者の除名は認められていません。が、申請すれば一時的な外出は可能です。



 この話の始まりとなるのが、この研究。



 *裏設定:プロジェクト「Preskia と Losaria」

 幼い『羽蝶』が「風に煽られ」にてどこからか引っ張り出してきて引き継いだのがこの研究。
 彼女と同じく、脳の成長過程を記録することが目的の研究でしたが、脳内に埋め込まれた記憶チップのデータが消去された、もしくは埋め込まれたけれど結局起動させられなかったことで、この研究は打ち切られます。
 その際、サンプルであった Preskia と Losaria は二人の研究員によって持ち出され、華永国の郊外で育てられました。
 このサンプル二体は遺伝子操作もされており、目印として二体ともに自然ではありえない紫色の瞳を与えられました。
 二人の研究員と二体のサンプルを見つけ出した組織は、研究員に圧力をかける意味もこめて華永の郊外に本部を移転。華永国が潰れた時にサンプルは回収され、研究員二人は処分されました。
 このサンプル二体はヒトの発想力と、ヒトを超えた記憶力・演算力を併せ持ち、「天才」の名を欲しいがままにしています。
 さてこの二体。本編を読まれた方ならば誰かお分かりですね? 後の『覇王樹』と『羽蝶』です。



 『覇王樹』と『羽蝶』は組織に戻された際、外での記憶を「消されて」いますが、それは「思い出せない」状態にされているにすぎません。ので、『覇王樹』はばっちり覚えていますし、『羽蝶』もふとした瞬間に思い出すようです。その記憶があるからこそ『羽蝶』は外への思いを募らせました。
 ですが『羽蝶』の扱いは未だに「サンプル」であり、彼女が組織の建物から出ることは当然のごとく許されません。
 その時、彼女が頼ったのがこの人。



 *登場人物紹介:輝安

 本名・蠎輝安(うわばみ・きあん)
 組織内コードネーム・『空木』
 身長・175cm位

 理扉出身で、組織の中では落ちこぼれとされる彼。専攻は遺伝子学ですが、プロジェクト「Preskia と Losaria」には全く関わっていません。
 組織内では異質な存在で、幼くして組織に連れてこられた『羽蝶』『覇王樹』『勇魚』の面倒を見ていました。
 大雑把な性格で、組織に対しても「最低限の生活は保証されてるし、たまに放浪もできるし、まあいっか」程度の認識しかしていない駄目な大人。だけれども、人間らしい感性を見せない『羽蝶』やら、子供らしさの欠片もない『覇王樹』やら、組織に留まるには普通すぎる『勇魚』やらに手をやいていました。要するにお節介。
 能利で優沙と子をもうけるものの、組織から足抜けできないが為に、たまに顔を見に行くくらいしかしていませんでした。なんて駄目な父親。
 『羽蝶』が組織を抜け出した際に一緒に逃げだし、その後は能利に家族とともに滞在。優沙とは、紗綾の進路について度々もめていたようです。
 そして本編第二章が始まる前に、本人は瑠璃の手引きで東の大陸へと亡命しました。



 *裏設定:プロジェクト「Heather」

 『羽蝶』が独立して初めて取り組んだプロジェクト。内容としてはプロジェクト「Preskia と Losaria」とほぼ同じでした。
 『羽蝶』の研究となってはいますが、『覇王樹』もこの研究には一枚噛んでいます。
 使われたサンプルは Heather 一体。この研究の結果は後に『羽蝶』自身の手によって応用され、蒼穹と時霊、二体の人工知能が生み出されます。



 *裏設定:『羽蝶』の研究

 Heather や人工知能の研究とは別に、『羽蝶』が行っていた研究は多々ありますが、物語に関係する研究をもう一つここでご紹介したいと思います。

 遺伝子の両端にはテロメアと呼ばれる領域があります。細胞が分裂する毎にこのテロメアは短くなっていき、分裂できる回数に実質的な制限をかけています。
 『羽蝶』はこのテロメアを除去するとどうなってしまうのか、人の細胞も永久に分裂することができるのか、を研究していたことがあります。
 組織から逃亡する際に、この研究で作った薬を自らで試しています。
 テロメアが除去されたことによる反動で多くが細胞自殺を起こし、十八の見た目から十くらいまで「若返って」います。そしてこれが、第一章にて彼女が虚弱体質になっている原因でもあります。



 *裏設定:『鷓鴣』の研究

 上の『羽蝶』の研究は、彼女が組織から逃亡した時に自動的に打ち切られましたが、彼女が組織に戻ってからその研究を引き継ぎたいと言い出す研究者が現れました。それが『鷓鴣』です。
 ただし彼女は『羽蝶』の研究を根本から誤解しており、『羽蝶』が目指したのは不老だと信じています。それが、『羽蝶』が引き継ぐのを渋った主な理由です。
 最終的に引き継ぐことになった『鷓鴣』は、ウィルスを媒介し、先述したテロメアを修復する酵素を細胞に取り込ませることにしました。
 方法は違いますが、結果は『羽蝶』とほぼ同じ。『鷓鴣』の場合は自分を被験体にした時のショックで人格にも影響を及ぼしています。
 この時彼女は『羽蝶』の判断で実家に帰されることになり、当時『鷓鴣』の実験パートナーであったヘザーも、一度組織から離れることになりました。



 長々と書き連ねたこの研究設定ですが、この辺りは初期に考えたそのままなんですよ。ほぼ手付かず。
 なので小学生の発想なんですよ。かなり無理がある設定なのは分かっています。
 ですがここを崩すとこの話は成り立たなくなってしまうんですよね。どうしてこんな設定にした、自分orz
 いらない補足ですが、これを実践するとどうなるかというと、不老になるどころかガンになりますので真似しないように。いや、できないと思いますけど。

 この世界観では、現代と同じく科学技術があります。
 携帯が普及する前のイメージなので、第三章時点で1990年代くらいのイメージでしょうか。ちゃんとした考証はしていません。
 何故って、世界に広く普及していなかったとしても組織内では普通に使われていたりもしますので。天才科学者集団の持つ科学技術は異様。そしてそれを普及させる気のなさも異様。

 舞台となっているのは、所謂西の大陸です。東の大陸は欧州のイメージなので、髪の色やら目の色やら様々ですが、西の大陸は基本的に茶目/黒目/茶髪/黒髪。ただし目の色は、稀に他の色もあり。という感じを思っています。当然後付け。
 それぞれの国のイメージですが、理扉はアメリカ、能利は日本だったりします。なので、理扉では新年度が秋始まり、能利は春始まりとか。あまり本編では関係ないんですけどね。
 華永はフランス、東春はイギリスだそうですよ。聞かないでください、私にもこの辺りのイメージは分かりません(待)

 続きまして、適当にメインメンバーの設定を。



 *登場人物設定:瑠璃

 本名・猪代瑠璃(いしろ るり)
 偽名・規那浅淺(きな あさじ)
 組織内コードネーム・『羽蝶』
 身長・166cm

 紫の瞳・茶髪。綺麗というよりも、幼さの残る可愛らしい顔立ち。
 外見年齢約18歳。

 サンプルとして脳に記憶チップを埋め込まれた一人。
 誕生してすぐに組織から連れ出され、綜を兄、茘枝を幼馴染として、華永郊外でその幼少期を過ごしました。
 組織に連れ戻されたのは三歳の時。この時三年間の記憶は消され、チップが起動させられます。「思い出さないように」されただけの記憶の消去は完璧ではなく、ふとした瞬間に彼女は外の世界を思い出すことになります。そして思いを募らせていきました。
 行動を起こしたのは十八の時。自らが研究していた薬の被験体となり、恐らく彼女の目論見通り幼くなる。そして丁度外出予定のあった輝安に一緒に連れ出してもらった所から、この物語が始まります。

 二度目の組織外での生活を経て、彼女は人間らしい表情を見せるようになりますが、それは人間関係を円滑にするためには表情が必要なのだと彼女が「学んだ」為。彼女自身は未だに感情というものが良く理解できず、他人の表情を真似しているにすぎません。



 *登場人物設定:綜

 本名・猪代綜(いしろ そう)
 組織内コードネーム・『覇王樹』
 身長・175cm

 紫の瞳・茶髪。瑠璃同様、やはり顔立ちはどこか幼い。

 瑠璃より二年前に作られたサンプルで、彼女と同時に組織から連れ出されました。
 幼いながらも自分自身の異常さに気付き、それを認めた上で周囲に溶け込めるように「演じてきた」のが彼です。
 形式上組織の外にいた三年間の記憶は消されたことになっていますが、本人ははっきりと覚えています。

 幼い頃から大人の余裕というか落ち着きがあり、好んで含んだような、そして相手を無闇に誤解させるような言い回しを使います。
 とにかく他人をからかうのが好きという、問題児。



 瑠璃と綜は同じ猪代姓を冠し、似たような容姿をしていますが、それは使われた遺伝子がほぼ同じだっただけで、彼らの血の繋がりはありません。



 *登場人物設定:茘枝

 本名・瑕瑾茘枝(かきん れいし)
 組織内コードネーム・『勇魚』
 身長・約160cm

 瑠璃や綜が華永郊外に住んでいた頃の近所の子供。
 瑠璃と綜の「両親」は彼らの居場所が組織に突き止められることを恐れ、彼ら二人が人と会うことをよしとしませんでしたが、やはり子供らしく遊ばせてやりたいとの思いもありました。なので二人が茘枝と親しくすることを禁止できず、見て見ぬ振りをし続けたのです。
 華永が崩壊した際、瑠璃と綜は「回収」されることとなりますが、その時に扱いに困ったのが茘枝の存在でした。
 サンプルに関わったという理由から野放しにしておくことができない、そしてまだ幼く、可能性があるとの理由から、茘枝も組織に連れていかれることとなります。
 ですが彼女はやはり「普通」でした。組織の外にいれば、賢い部類に入ったのかも知れませんし、本人も相当な努力をしましたが、その程度で埋められるような差ではありませんでした。
 彼女のコードネーム『勇魚』はクジラの別称。コードネームの意味でも、能力の意味でも、彼女『勇魚』は『羽蝶』に釣り合わないと言われ続けます。



 *登場人物設定:紗綾

 本名・蟒紗綾(うわばみ さあや)
 組織内コードネーム・『龍玉』
 身長・157cm

 輝安の娘。父親不在の幼少期を過ごしました。母親・優沙があれなので、幼い頃からプレッシャーをかけられた結果、相当優秀に育ちあがりました。
 瑠璃がある意味天才であるのに対し、紗綾は秀才。彼女の努力は尋常ではありません。
 そしてそのせいもあり、輝安が組織に追われた時、彼女は組織に引き抜かれることとなりました。

 第二章を経て計画通り彼女は総合研究室・瑠璃の下に配属。ただ、彼女は瑠璃も認める程の頭脳の持ち主。ただおとなしく瑠璃の庇護下に収まっていた訳ではありません。彼女は彼女なりに情報を集め、瑠璃がどんな人であるのか、彼女が敵対する綜はどんな人なのか、彼らの思想を客観的に観察・分析し、自分はどの立場にいるべきなのかを冷静に考えていました。
 その際に辿り着いたのがプロジェクト「Preskia と Losaria」であり、綜・瑠璃の二人が「兄妹」である事実でした。
 どうにかして彼らを止めようとするものの時既に遅く。年齢が十以上も違う秀才の彼女が、正真正銘の天才に敵う訳もなく。

 本編終了後、彼女は鼎家に引き取られます。そして瑠璃が目指した華永復興を手伝いました。復興後はすぐに国の代表として瑠璃に問答無用で指名され、拒否権を与えられずに国のトップとして立つことになる、ある意味貧乏くじを引いてしまった人。



 *登場人物設定:ヘザー

 組織内コードネーム・Heather
 身長・149cm

 プロジェクト「Heather」にて制作されたサンプル。
 脳に記憶チップを埋め込まれた以外は全く普通の人間と変わりません。むしろ瑠璃や綜よりも普通の人間に近い。
 性格のおとなしさ、穏やかで本編では目立ちませんが、いやそもそも本編には登場しませんが、才能だけをとってみれば瑠璃や綜と同格です。ただしヘザーは瑠璃や綜のように周囲からプレッシャーをかけられることがなかったので、狡猾さや強かさもなく、純粋で真っ直ぐな子になりました。ので、才能の伸びもいまいち。
 瑠璃が不在の二年間は綜が面倒を見ていました。絶対に奴は甘やかしたんだと思います。ふわふわした可愛らしい女の子ですからね、自分の妹みたいに感情が欠落しているわけでもなく、計算高いわけでもなく。

 『鷓鴣』とは気があったようで、パートナーとして共に研究していました。実験の最中に片目を失明していますので、それを補う形で聴力がよいです。
 「日常の果て」直前で『鷓鴣』が実家に帰されることが決まった時、彼女自身も外の世界が見たいと願い出ます。瑠璃の独断でヘザーも外に出され、暫くは転々とするものの、最終的には『鷓鴣』、舞華の下に辿り着きました。
 この一件で彼女の身体は死にますが、彼女の脳に埋め込まれていた記憶チップから情報を抽出、AI である時霊にコピーされ、彼女の人格は復元されました。
 その後、ヘザーは舞華と行動を共にします。この二人が組織に戻る、というかメインメンバーである瑠璃や茘枝に会いに来るのは、組織が崩壊した本編終了後のこと。

 あの組織に属する研究員は大概誰にも頼らず弱みを見せることもないなか、ヘザーは己の限界を知り、他人に頼ることをためらいません。他には特筆することもなく、あの組織の中で育った割には異様なまでに普通の子でした。

 イメージカラーはピンクに近い、淡い紫。



 *登場人物設定:青雨

 本名・槐安青雨(かいあん せいう)  組織内コードネーム・『公孫樹』
 身長・約180cm

 以前公開していたバージョンでは最後の最後にちらりと本名だとか家族構成だとか出てきたんですが、「科学者は魔術を夢見る」の再録がされていない現在、彼は通りすがりの一研究員でしかないですね(笑)

 理扉の出身で、年齢は瑠璃や綜よりもいくつか上。
 組織のあり方は正しいと、それを変えようとする綜は間違っているのだと、彼は瑠璃の側につき、組織の崩壊に加担します。が、彼はそもそも組織擁護派なので、一度潰した組織を再び立て直そうとしました。ただ、これは瑠璃によって阻まれますが。
 その後はどうしているのか、恐らく理扉の実家に戻っているのだと思われます、はい。



 このくらいですかね、語ることがあるメンバーは。
 では最後は、「科学者は魔術を夢見る」についてちらちらと。何故って、最早書き直すであろう気がしないからですよorz

 この「科学者は魔術を夢見る」は最初から予定されていた話ではなく、後から付け足された後日談です。
 華永の復興が軸となり、そこに組織の復興を目指した青雨が絡んできていたんですね。
 「混沌の波」が約50年後の話で華永もまた舞台になるので、華永復興のエピソードがあった方がいいんじゃないだろうかと思いつつも、未だ書き直さずに放置しています。
 前回のパージョンでは本編内で説明されなかったことが多々あったので、それを解説する意味でも「科学者は魔術を夢見る」は必須だったんですが、今回書き直した結果そこまでの解説も必要ないんですよね。
 十話編成でしたが、書き直す際には大幅に短くすることになると思います。



 今の所語りたいのは以上です。長々とお付き合いいただきありがとうございました。



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